

美徳とはなにか
敬愛してやまない、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリ トゥ監督の作品。 相変わらず面白かった! いつもは時空を超えて〜湿度高い〜重力重め〜の作品が多いけど、今回は軽快でテンポよく全編・超絶ロングショット(1回の長回しで撮る撮影手法)風、であたかもその作中で起こるすべてを”観客"として目撃するかのような体験ができる作品。(撮影監督は「ゼロ・グラビティ」のエマニュエル・ルベツキ。メキシコ人天才監督タッグ) このロングショット、実際にはもちろんすべてを1回の長回しで撮っているわけではないんだけどとにかくすごい。カット割りと構図内に映るすべてが徹底的に計算し尽くされる通常のカットとは一線を画し、否が応でも緊迫した状況(ストーリー)の目撃者にされてしまうような監督の「圧」と、スリルがある。(実際には長回し”風”なので、単なる長回しより高度な撮影&編集技術が必要だったそうだけど) 「LALALAND」のエマ・ストーンも、こちらの役の方が素に近いのでは?と勝手に思ってしまうほどちょいワルな自然体。 ただ、全編を通してなんというかお茶目でユニーク。 主人公は過去


トビウオの夢をみた
異国情緒あふれる大きな3階だてのアンバランスな船の甲板で、漁師のおじさんたちと海を眺めている。海は波が高くて、周りにも漁師の小舟がたくさん揺れている。 すると、海からたくさんたくさん、トビウオが甲板に飛び出してきて、みんなで笑いながら根こそぎつかまえた。向こうから飛び込んでくるので、釣りの必要なし。入れ食いならぬ入れず食い状態。 意味わからないが、楽しかったな。幸先良さそう。 トビウオは食べるのも好きです。


5分後の世界(村上龍)
始発で向かった早朝の新宿駅、うすら寒いなかで8分間の待ち時間。 4時台にも関わらず駅のホームにはたくさんの人たちがいて、あまり寝ていないぼうっとした頭で彼らをみているうちに、先日読んだ「5分後の世界」を思い出した。 朝帰りのギャル2人組が、ホームの地べたに座り、笑いながらポテトを投げ合って食べている。 疲れた現場仕事の人々が今日もまた仕事へ向かう。 この時間はいつも楽しい時間(飲み会の帰りとかこれから山登りとか)と、労働の疲労漂う人たちの境界線がくっきりと見えて不思議な時間。まだあまりサラリーマンの姿はない。果たして私は側からどのように見えているだろうか?旅行にしては少ない荷物で、サラリーマンには見えないし、時間を持て余した主婦にも見えず。そんな風景を見ていて。 ふと線路脇からアンダーグラウンドの戦士が飛び出してくるような気がした。 ホーム下の空間は、かつて私たちが暮らしたかもしれない場所。「ネイティヴ・ジャパニーズ」という言葉が生まれるほどに各国によって地上を占拠され、蟻の巣のような莫大な地下帝国で生まれたかもしれない人々。生まれなかったかもし


Are we (still) together?
昨年の夏、エジンバラへ向かう機内の中で奇妙な映画を見て、なぜかそのまま旅行中ずっと頭から離れず、旅の記憶とともに織り込まれてしまった映画がある。 「キッズ・オールライト」(リサ・チョロデンコ監督)、2010年公開。 タイトルからティーンエイジャーのストーリーかと思ったら大間違い。 同性婚のカップルが精子提供を受けてもうけたティーンエイジャー2人と過ごす家族の時間、その山あり谷ありを描く(ざっくり)なのだけど、親も人間であり、生物学上は女性であり、ジェンダー上では男性であり女性であり・・な、新しい家族の形に、ストレートな私は特段感情移入できる部分もなく、ほぼ最後までぼーっと見進めていたのだけど・・ 最後にMGMTの「The Youth」という曲がエンディングで流れ出して、もうなぜか泣きたいほど寂しくてたまらなくなった。(実際、消灯後の機内で泣いたかもしれない) 「The Youth」は、限りある青春時代のある一瞬を切り取って、成長の過程で共にいる他者に向けた曲。これから迎えるべき新しい時代や成長していく自分たちの希望とともに、もう一緒にいられないこ