Are we (still) together?
昨年の夏、エジンバラへ向かう機内の中で奇妙な映画を見て、なぜかそのまま旅行中ずっと頭から離れず、旅の記憶とともに織り込まれてしまった映画がある。
「キッズ・オールライト」(リサ・チョロデンコ監督)、2010年公開。
タイトルからティーンエイジャーのストーリーかと思ったら大間違い。
同性婚のカップルが精子提供を受けてもうけたティーンエイジャー2人と過ごす家族の時間、その山あり谷ありを描く(ざっくり)なのだけど、親も人間であり、生物学上は女性であり、ジェンダー上では男性であり女性であり・・な、新しい家族の形に、ストレートな私は特段感情移入できる部分もなく、ほぼ最後までぼーっと見進めていたのだけど・・
最後にMGMTの「The Youth」という曲がエンディングで流れ出して、もうなぜか泣きたいほど寂しくてたまらなくなった。(実際、消灯後の機内で泣いたかもしれない)
「The Youth」は、限りある青春時代のある一瞬を切り取って、成長の過程で共にいる他者に向けた曲。これから迎えるべき新しい時代や成長していく自分たちの希望とともに、もう一緒にいられないことをどこか諦念も込めて歌った、NY版演歌みたいな一曲。
PVもまたヘンテコで面白い。
けどここまでヘンテコにしなければ悲しくてやりきれない歌だったかもしれない。
・The Youth- MGMT
この曲を聴きながらエンディングをすべて見終わり、ようやく監督のやりたかったことを理解した映画は初めてかもしれない。
これは設定上一見LGBTをテーマにし、あらゆる性差が生むギャップを超えて、自分なりに他者と繋がろうともがく人々を描く。ただそこにベースとして存在するのは、人間としての存在の限界。人はいかなる時も否応なしに変化し続ける存在で、結局はひとりであるという諦念にも似た感情。もはや夏目漱石の世界。けどだからこそ一緒にいられる時間は素晴らしい、とエンディングを通して監督に訴えられた気がした。
私も、この感情なら身に覚えがある。
これまで無邪気に一緒にいたはずなのに、気がついたときにはもう友達が、恋人が、離れていってしまって、もう二度と共に過ごすことのない不可逆的な寂しさ。そしてそれをどこか心の片隅では気づいていて、どうしようもできなかったこと。
その寂しさを携えて、(そしていま一緒にいることのできる人に感謝しながら)スコットランドの美しい景色とウイスキーの蒸留所を見て周ったことは新しい映画体験であり、新たな感動だった。