

醜くてユニーク、だから愛おしい
醜くてユニークな家族の物語。が故に、とっても愛おしい映画。 「8月の家族たち」(監督:ジョン・ウェルズ) 未完成で行き先のない人々が描くリアルなストーリー。 それはある時うわっともつれて交差し、またパッと散っていく。 だから一緒にいる時間が身を削られるほど辛くても、それはかけがえのない時間。 家族ってそういうものだと血が通った視点で教えてくれる。 (途中家族が殴り合ったりするので、かなりユニークすぎる視点かもしれないが。) それにしても俳優陣が豪華なことこの上ない。 ドラッグ中毒から夢現つを生きていたかと思うと途端に現実に戻りドスの利いた声で家族の弱点を突きまくる、圧巻のメリル・ストリープ。 唯一、未完成な家族の中で芯があるかのように見えるが脆い存在のジュリア・ロバーツ。 大人でも子どもでもない脆い年齢を演じた、「リトル・ミス・サンシャイン」の アビゲイル・ブレスリン。 この話で面白かったのは、女系家族の展開。 ストーリーの冒頭で唯一、一家の大黒柱であったかもしれない父が 自殺ともつかない不自然な死を遂げてしまう。 それぞれに夫やフィアンセはいる


境目を超えていく無重力な存在
「あん」(監督:河瀬直美) 2017年最初の映画は、今更ながら映画仲間に薦められた「あん」を観ました。 勝手に人の思いや伝統文化が継承されるストーリーを想定していたものの、社会問題にも触れながらストーリーは意外性を持って展開。 いつも思うのだけど、河瀬監督の映画は"非言語"なるものの表現に引き込まれる。 言語で説明できない何か、主人公がその時感じるもの・感じているが言語では説明しえないもの・・ それがとても素敵。 特に中盤以降、樹木希林さんが自然と対話する描写は、もっと見ていたかった。 社会の中に存在する境目の、外と中。その壁を軽く超えていく存在。そしてしまいには、本当にその壁を超えて行ってしまう。その描写は、メキシコ人のイニャリトゥ監督を彷彿とさせるような、 生々しく重力を感じられる、素晴らしいシーンだった。 その描写に、なぜこれほど惹きつけられるのかと考えてみると、小さい頃に感じた感覚に近いからなのかな。小さい頃は、子ども独自のルールで子どもなりに世界を把握しているのに、大抵の世界のルールは大人によってつくられるものなので、そこで子どもが感じ