フランス人女性の美しさは情熱とユニークさでできている
フランスといえば芸術の都・パリ。
ボンジュ〜ル、ジュテーム。そんな世界で果たしてスポ根は存在し得るのか?
正解は、イエス。
2013年のレジス・ロワンサル監督「タイピスト!」(原題:Populaire)。限りなくユニークな形で、それは確実に存在し得る。
フランス在住20年の方から「面白いから絶対に観た方が良い」とおすすめいただき早速レンタル。タイトルからは、なんのこっちゃ。なんだかOLの話かな、と思いきやとんでもない。ずば抜けた技能を競うタイピング選手権のスポ根ムービーであった。
1本指打法から10本指打法に矯正するためにネイルカラーを対応エリアのキーごとに塗り分けたり(それがまたすば抜けておしゃれ))、より早いタイピングを実現するために肺活量を鍛えランニングしたり、敵を精神的に追い詰めたり・・嘘だろ、と笑えるほど、まさに女の戦い。
ユニークに、情熱的に(そしてかわいく)自分の夢を追い求める1950年代の女性が主人公。時代の変化や上司、男性?関係なし。「私は私のまま。違うのはドレスだけ」自分という存在と、夢を情熱的に追い求める姿はとっても健気でキュート。フランス人女性のキュートは、情熱とユニークさからできている。これはフランス人女性にしかできない表現だからずるい。
*余談・・
最近フランス関係者とやり取りする機会が多く、とても思うのだけど、フランス人の方は(特に女性)「Je pens, donc je suis」(我思う、故に我あり/仏・哲学者デカルトの命題)を地で行っている方が非常に多いと感じる。国民性なのか、そういう背景があるからこそこの名言が生まれたのか、素晴らしい。
また「ムード・インディゴ」のロマン・デュリスがまたとても良い味出してる。
個人的には、この方ってフランス本国では2枚目キャラ?なのかな?と疑問なのだけど、笑えるぐらい熱血なタイピングコーチ役。(タイピングにコーチ必要?と思われるかもしれないが、世界選手権まであるので必須である)二人とも、いつ仕事してるの?と突っ込みたくなるほどに仕事そっちのけで熱血。笑
ストーリーも王道(少年誌のスポ根漫画みたい)で、エンディングも観ていてだいたい分かってしまうのだけど、それでもフランスの田舎娘が謎のタイピング世界選手権で輝く瞬間を、観るのを辞められない。それほどに演出と設定がユニークすぎる。
最後に。
監督が主人公役のデボラ・フランソワに『オードリー・ヘップバーンを勉強しておくように』と指示したと言われているように、このストーリーにはユニークな表層以外にも、重要な命題が含まれている。原題の「Populaire」(人気のある)が示すように、オードリー・ヘップバーンの名言が示すように。("Success is like reaching an important birthday and finding you're exactly the same."-Audrey Hepburn)
それを踏まえて、「タイピスト!」ではなく昔の仏映画みたいに「ドレスを変えても、私は私のままで」「成功はあなたを変えない」とか「フランス人女性の美しさは情熱とユニークさでできている」とか。笑
うんと長いタイトルでもよかったのになぁと思うのでした。