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  • chiharuf

オフライン再考

ここ数ヶ月であらゆる機会やコンテンツが急速にオンライン化していて、(全くそんな認識はないけれど)一応定義上では「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代はじめに生まれた、主にデジタルネイティブを指す言葉)に含まれる私でも、少し戸惑うレベルであらゆる価値観やライフスタイルが変化している。かつて、「わざわざ電話」という発想がなかった時代には考えられないスピードで「わざわざ会う」時代がすぐそこまで来ている。というかもう来ている。

*私は1985年生まれだけど、生まれた時には黒電話、小学生でポケベル&公衆電話、学生時代はガラケー、社会人でiPhone&MacBookって・・改めてすごい時代を生きているなと思う。黒電話が恋しい。

・個々で構築してきたリテラシー

オンラインとオフライン、当然ながらそれぞれに良いところがあり、状況や場合に応じて使い分けるリテラシー(適切に理解し、適応する力)が求められているわけだけど、それについても当然ながら学校では習わないし会社の研修のような機会があるわけでもなく、個別に経験してきたことや知見をベースとして、あらゆる業務上から個人レベルに至るまでネット上での個々のリテラシーは発展してきた。このあたりは、個別に習得してきたリテラシーが普段どのように機能し、利点や摩擦を産んでいるのか、個人的にとても興味のある領域でもある。(共通のマニュアルなどがあるわけでもないのに、すごいなぁと)そしていま無意識かつ迅速に、トライ&エラーを繰り返しながら新しいリテラシーが生態系のように再構築されている。一言に「コロナ疲れ」などと言われているけれど、それにはこういった目に見えない破壊と再構築も含まれているのだと思う。

・急速なオンライン化によって再構築される「オフライン」の価値とリテラシー

これまで物理的に「集合」することで形成されてきた「オフライン」コンテンツ(テレビを始めとしたマスメディアで言えばリアルの場に複数の人間が集合して作られることが多い)が、主に「個人」によって形成されてきた「オンライン」と主従入れ替わり変化していくことは、普段考えているよりも大きな、180度価値観の転換に近いことが起きているのだと、オンライン個別収録を寄せ集めて編集されたテレビ番組を見ながら(私はいま何を見ているんだろう?と不思議な気持ちになる)思う。

*最近観て良かったと思うオンワードのCM(#StayStylish)も、もはや個別にスマホ画角で撮影されて寄せ集めて編集されたCMだったりする。これってすごいことだ。

これまで私たちの生活では、大半の人たちにとって主従でいうところの「主」であり、これまでは当たり前すぎて表現される機会すらなかった「オフライン」の価値(ON・OFFが示すように、「オフライン」の状態とは「オンライン」があって初めて認識されるものでもある)と、その変革が急速に与える価値観への変化。いままで主にネット民から「オフ会」と呼ばれていたものが(オンライン発のヒトやモノが、オフラインの世界へ飛び出していくこと)、急速に一般化され、オンラインが恒常化することでその価値が急速に上書きされ、従来の「オフライン」を塗り替えていく。これから徐々に緊急事態が解除され、第二波への警戒は残し、以前のような生活へ戻るように見えても、それは以前の「オフライン」とは全く異なるものになるのだと思う。ぱっと見は以前の「オフライン」なのだけど、よく見るとその中に「オンライン」的な秩序やコミュニケーション、ルールを内包したものになっていく。

・ほんとうの働き方改革

NYタイムズによると、GoogleとFacebookは来年まで在宅勤務を延長し、米国のホワイトカラー企業では50%を在宅、50%をオフィス勤務にするらしい。働き方の変化は、社会や家族のかたち、都市やインフラのあり方、ひいては日本の場合には首都圏と地方のあり方までも大幅に変えていく。ロバート・キャンベルさんが「News Week」に寄稿されているように、オンライン化は上下からフラットへと急速に組織変革を起こし、我が家でいえば夫婦が在宅で働くことで首都圏の熾烈な保育園問題からもゆるやかに解放され(日々の往復2時間通勤の代わり夫婦交代で子どもを見ることもできる)、過酷な長時間通勤がなくなり子育てをシェアすることでQOL(Quality of Life人/生の質)も、出産子育てによる女性のキャリア分断問題も圧倒的に是正され、地域への移住定住もしやすく、結果としてこれまで数年停滞していた日本の課題である少子化問題・地方創生問題にも拍車がかかるのではと思う。ついでにジェンダー超後進国の汚名も返上できるかもしれない。

現在すでに定着しつつある「オフ飲み」のように、「オフ婚」や「オフ旅」、「オフ世代」なんて言葉が出てきたりして。もし世代で区切るのであれば私は確実にオフラインの価値を主として生まれ育ってきた「オフ世代」だし、これからの生活においてもその価値を大切にしていきたいと思っている人間のひとりでもあるけれど、それが「オンライン」によって再認識されていることもなんだか皮肉で面白いな。

また書きます。

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