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K-POPのインクルーシブ戦略〜前半〜

先週から子どもの保育園が始まり、ようやく腰を据えて色々とできる時間が増えたはずなのに、なんだか忙しい。梅雨は色々と仕込みの時期でもあり、なんだか忙しなく日々を過ごしています。

そんな中、日々仕事を終えた後のここしばらくの楽しみが、いま「韓流」などというカテゴリの枠を超えて飛ぶ鳥を落とす勢いの韓国エンタメです。Netflixの「梨泰院クラス」「愛の不時着」から始まり、ポン・ジュノ監督のほぼ全ての作品を観て、現在huluで爆進中の「虹プロジェクト」を観つつ、先週金曜にはようやく!待ちに待った「パラサイト」が公開され・・そりゃ時間がないはずだといま書きながら思う(笑)Netflix勢は以前にも書いたので、今回は「パラサイト」と「虹プロジェクト(通称、虹プロ)」について前後半で書きたいと思う。

*タイトルのK-POPは本来であればK-エンタメとでも書きたいところだけれど、総じてわかりやすくK-POPにしています。

・「パラサイト」が痛快にえぐる社会の"隙間"

社会を真っ直ぐな眼差しで見つめ、どこか面白おかしくでもいつも真正面からテーマに向き合うポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」。カンヌを受賞したことでもすごく話題になりましたね。そしてどんな役もさらりと演じる(でも大抵、経済的に厳しい一家の大黒柱的な役が多い)ソン・ガンホ主演。最近では「オクジャ」や「スノーピアサー」をはじめとして、「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」などなど、社会の隙間に落ちたテーマなり登場人物を(「グエムル」では主人公の娘がまさに社会から見えざる側溝に落とされ、「オクジャ」では世界的食糧供給システムの隙間をかいくぐった主人公が激闘する)巧妙に救い上げ、それをどこかユーモラスかつ真っ直ぐな視点で突きつける監督。個人的にも大好きな映画監督です。

・「万引き家族」にはなかった"正誤の錯乱"

扱うテーマの類似性からもよく是枝裕和監督とともに語られることの多いポン・ジュノ監督だが(今年ふたりは対談企画も実現している。大変面白いのでぜひ)、これまた大好きな是枝監督の「万引き家族」には、なぜかあまり惹かれなかった。その理由が分からず、ずっと心に引っかかっていたのだけれど「パラサイト」を観て、なにかがすとんと腑に落ちた。それは本来、社会通念上「悪」に分類されてしまう人たちの、リアルな"無邪気さ"ともいうべき正当性。観ているうちに誰が正しくて、誤っているのか(正誤や正当性は状況によって変化するのでそもそもないようなものだけど)、わからなくなってしまう切り口で、それがいかに現実の社会を示しているか気づかされる。是枝監督との対談で、ポン・ジュノ監督はそれを"浸透性"と呼んでいる。美しい言葉。異質なものがいつの間にか誰かの日常に入り込み、気付かれて爆発するか、気付かれないままなにごともなかったかのように過ごしていく"浸透性"。それを監督は"寄生"を意味する「パラサイト」と名付けた。ここでは「万引き家族」の詳細については書かないけれど、「パラサイト」はその切り口や何層にも連なる人物描写の構造が非常に緻密で、唸りながらあっという間に観てしまった。

・爆進中の韓国映画業界が取るインクルーシブ戦略

これはどちらかというと後半のK-POP(音楽)で大きく書きたいテーマだけれど、近年韓国のエンタメが取るインクルーシブ戦略(*誰でも参加できる、みんなを巻き込むような手法)には本当に脱帽してしまう。「オクジャ」や「スノーピアサー」など、もはやパッと見にも「韓国」「韓流」などと分からない数々のグローバル作品を打ち出していることもそうだけれど、やはりその精神性はこの写真一枚から十分伝わってくると思うのだ。以前の投稿(「ふたつの物語」)でも載せたけれど、「パラサイト」の現場スタッフ集合写真。なんだかみんな若くて生き生きと才能を発揮し、楽しく作品づくりをしていることが十分すぎるほど伝わってくる。私はモントリールで映画を専攻し、就活時代に映画業界を受けていたこともあって思うのだけれど(そして現在は時間が経って改善されていることも願いつつ)、日本の映画業界がわずか数社にあらゆる資源や権利が集中している現状や、海外の映画が流入するスピードの遅さなどなど世界の映画の潮流から何歩も遅れを取っている状況が映画作品自体の多様性を阻む要因になっていると考える。もともと国内の豊かな文化や風土を見てもわかるように、日本は多様性豊かな国であった。映画業界に限らず、その多様性を再び取り戻すためには、「インクルーシブ」という視点をどのように解釈し、実現していくかは今後日本にとって外せないコンセプトになるだろうと思う。

次回は、かなりK-POPオタク視点の記事になりそうですが、音楽について書いてみたいと思います。

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