ふたつの物語
最近、時間に割と余裕があるのでNetflixで人気のドラマを片っ端から見ている。
しかもこれまで見る機会のなかった韓国ドラマ。普段ドラマというものを滅多に見ないせいか(映画はよく見るけれど)、なんだかとても夢中になり感動して涙までしてしまったので、ネタバレしない程度に書いておきたい。
*以下、あらすじ程度は出てきてしまうので知りたくない方は要注意でーす
<梨泰院(イテウォン)クラス / Itaewon Class>
これはもう、大人の青春ドラマ。雑な表現だけど、「ワンピース」が好きな人は好きだと思う。(ちなみに私は超好きでした)
「パラサイト 半地下の家族」にも出演しているパク・ソジュン演じる主人公の、一風変わったこの髪型は、物語が10年以上経過しても唯一変わることのないアイコンでもあり、原作が漫画であることにも由来するらしい。(日本だと宇宙兄弟みたいな感じなのかな)
仲間たちはこんな感じ。
なんだかすごく楽しそうで、自由で素敵じゃないですか?
でもそれぞれに半端ない葛藤や過去の歴史を持っていて、ストーリーは王道(夢・憧れ・友情・恋愛・復讐など)に、現代っぽい要素(起業・トランスジェンダー・SNSなど)が散りばめられ、全16話の中に相当な要素がこれでもかというほどギャンギャン詰め込まれています。それでもすごいのは、それぞれの人物にきちんとした動機づけが存在していて矛盾せず、それをひとつずつ丁寧に追っているところ。(ただ最後にひとつ「え!」というのはあったけど、この辺りは観た方と話してみたい)
長くなってしまうので割愛するけれど、この物語が若者を中心に国内外で支持を得ているのは(先週から今週時点でNetflixランキング3位以内を占めている)、特にセウォル号沈没事故以降、変革を続けている韓国社会を体現する「反体制」を描いているところでもあると思う。そして現在の日本にも大いに共通するテーマだと感じた。
<愛の不時着 / Crash Landing on You>
タイトルからしてかなり重い、もしくはドロドロの昼ドラ風情を想像していたのだけど、内容としては38度線を超えた人々の交流を描く、ロマンスありの現代版・映画「JSA」のようだと感じた。(個人的にはロマンスに38度線を絡めるのは反則だ、と思う)ちなみにこちらは今週Netflixランキングで1位になっている。
「梨泰院クラス」が現在の社会や資本主義の中において自己を実現していく話だとすると、「愛の不時着」は適応した社会(韓国)と、違う歴史を辿った社会(北朝鮮)の比較、しかもそれを韓国において社会的にも成功したが決して幸福ではない女性経営者の視点で描き、いまの社会や家族のあり方に疑問を呈する物語でもある。
異なる歴史を70年辿り、本来は出会うはずのなかった人たちがお互いに交流するさまを観ながら、同じく波乱の時代を生き、祖国の地を踏まずに亡くなった曽祖父のことを考えた。(全く異なる世界で生きていた曽祖父の若かりし頃にいま会ったら、きっとこういう感じなのかもしれない)地球の裏側でもすぐにSNSで繋がれるこの時代に、38度線を超えてしまえばその後の連絡はおろか、消息すら知ることができないのだ。私は大学の頃に重村智計先生の授業を取り割と勉強していた時期もあり、何度か韓国も訪れているのだけど、元々ひとつの国で、言語も民族も同じ地続きの2つの国が分たれてしまったことや統一への思いは、第三者からは実感として理解することがなかなか難しいのだと思う。だからこそ、歴史を学ぶことの大切さを改めて思う。私たちは学び続けなければならない。
2つの物語に共通して、音楽や脚本も素晴らしい。いまの時代に海外ロケ(「愛の不時着」はスイスロケを敢行)を行い、国内外で支持を得ることのできる物語を作れる韓国のエンタメは、より若い世代に人気を博しているアイドルやファッションの多大な影響を考えても、やはり今とてもつなく勢いがあり、エネルギッシュでクリエイティブだ。エネルギッシュでクリエイティブといえば、前述のカンヌ映画祭パルムドール受賞作品「パラサイト 半地下の家族」でのスタッフ集合写真もすごく素敵で話題になりましたね。こういうものづくりの現場が、いまの韓国エンタメ市場の興隆を支えているのだと思う。「愛の不時着」の女性脚本家パク・ジウン氏、「梨泰院クラス」クァンジン氏のほかの作品も観てみようと思う。
この生活における「物語」(ドラマ)の必要性は、私にとっては異なる世界を垣間見ることのできる小さなでも重要な「窓」であり、学び続けることの大切さを再認識させてくれるものでもある。
また書きます。