「無境界」への憧れ

「老人と海」を改めて読んで、この作品に現代人が求めてやまないものは、まさに「無境界への憧れ」だと思った。

大ブームになってから久しい「孤独のグルメ」冒頭でも、

"社会や時間に囚われず、幸福に口福を満たす〜"

という能書きがあるけども、そんなの比にならないぐらいの囚われなさ。

名もなき「老人」(本当の名前はサンチャゴだが、作中では滅多に語られない)、職業は「漁師」。老人の過去も未来も、あまり語られることはなく、あるのは只現在のみ。そして老人は、無境界の極みである大海原へ繰り出していく。

そこには社会の縛りも時の流れもなく、ゆえに老人はあなたであり私であり、あるのは只「命同士の戦い」。たまに「魚の視点」になってしまう「老人」を介して、解釈は自在に読み手に委ねられる。

社会や時間という境界にがんじがらめになりそうになったら、野生児であった幼い時に戻りたくなったら、老人と海の大海原へ櫂をこぎ出すことができる。

必死に読んでいると、うっすらと自己が海のなかに溶け出していくような、そんな作品なのだなぁと思ったのでした。

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