はやとちり
たまに、猛烈に聴きたくなる曲がある。

宇多田ヒカルの「はやとちり」。
「HAYATOCHI-REMIX」というリミックス曲もある。私が本当の意味でリミックスを体現する世界に出会ったのはこの曲においてで、個人的に大好きな「リミックスとはなんぞやの云々」もここにすべて詰まっていると言えるほどの名曲。
リミックスとは時に、原曲を超えるほどの解釈を提示し得るものである、と思う。
この曲においては、何かしら劇的な心情の変化も、それこそ「First Love」に代表されるようなダイナミックな恋愛も、「Movin' on without you」に代弁される失恋もないけれど、最も愛すべき日々の心情の機微が表現されていて、なんだかとても無性に聴きたくなる。
13歳の時に、Automaticを西友のCDショップ「WAVE」(今もあるのかな)で視聴し、即「ナンジャコリャ!」との衝撃を経たのち、人生初のライブ経験を「Bohemian Summer」で済ませた私にとっては、我が"宇多田ヒカル人生"を掲げても、最も好きかもしれない曲、それが「はやとちり」なのだ。
劇的な情愛も失恋も、出会いも別れさえも含まれず、むしろ主語さえも曖昧で、誰が?誰に?どう思ったの?で、何が起きたの?な世界なのだけども、
人との距離感、ホンネとタテマエ、少し傷つく行き違い、でも意外と深手。。
そんな情景のほうがより連続的に起こりうるものだし、私としては音楽に関わらず、映画・小説でもより日常的に出会いたい表現だったりする。(日常の些細な機微を表現し、それが名曲や名画になる、ということは実はその逆よりも凄いことだなぁ、とも)
宇多田さんが「日曜の朝」で歌っている内容にも近しいのかな。
♪幸せとか 不幸だとか
基本的に間違ったコンセプト
お祝いだ お葬式だ
ゆっくり過ごす日曜の朝だ
そしてそれは、実は日々の機微をこそ大事にしなさいよという私自身への戒めだったりする。