目に見えることば
先日、日本で初めて開催された「東京ろう映画祭」に参加しました。
お恥ずかしい話ですが、私は今まで身の回りにろう者の方がいらっしゃらなかったこともあり、ろうの世界がこんなにもユニークで、ユニバーサルな独自の文化を築いているとは全く知りませんでした。そして、ろうの世界の拍手の仕方でさえも。(実際にそれは、"目に見える拍手"として私にはとても感動的な発見でした)
私が参加した日の映画祭では、ろう者を取り巻く環境をドキュメンタリー形式で追ったフランス映画「新・音のない世界で」の上映と、フランス人のレティシア・カートン監督(彼女自身は聴者)、実際に出演されているレベント・ペシュカルデシュ氏(ろう者)による舞台挨拶・トークイベントがありました。
私は普段、言葉を交わす相手の目をきちんと見て、思いを伝えているか?
終始そう問いかけられる内容でした。
いまだ続く差別や追いつかない社会制度の中で、諦めずにメッセージを発し、またそれを受け取る「言葉のドア」である彼らの目はとてもきらきらとしていて、自分がいかに音ばかりに頼りきったコミュニケーションをとっているかということに気づかされたのです。そして、彼らの言語はただただ美しい。
それは、同じ仕草でも表情や伝え方によって意味合いも全く変わる言葉であり、時にアートである。お互いの目をしっかりと見て、自分の伝えたいことを伝えられる「目に見える言語」で、耳にばかり頼りきっていた私にはとても新しい発見でした。
また舞台挨拶&トークイベント自体は、多種多様な言語が飛び交っていて、ほんとうに脳内が刺激されました。
たとえば司会者の方が日本語で発した質問を、
・フランス人(聴者)であるレティシア監督へは日仏翻訳者
・フランス人(ろう者)であるレベント氏へは国際手話通訳者
・日本人(ろう者)である参加者へは日本の手話通訳者
のように、日本語、フランス語、日本手話、国際手話、多様な言語が飛び交う場となりました。
本映画は、アジアではまだ初上映とのこと。
このような歴史的な取り組みを成し遂げられた主催者の方へ改めて敬意を表します。
*東京ろう映画祭の詳細はこちら。