5分後の世界(村上龍)

始発で向かった早朝の新宿駅、うすら寒いなかで8分間の待ち時間。

4時台にも関わらず駅のホームにはたくさんの人たちがいて、あまり寝ていないぼうっとした頭で彼らをみているうちに、先日読んだ「5分後の世界」を思い出した。

朝帰りのギャル2人組が、ホームの地べたに座り、笑いながらポテトを投げ合って食べている。

疲れた現場仕事の人々が今日もまた仕事へ向かう。

この時間はいつも楽しい時間(飲み会の帰りとかこれから山登りとか)と、労働の疲労漂う人たちの境界線がくっきりと見えて不思議な時間。まだあまりサラリーマンの姿はない。果たして私は側からどのように見えているだろうか?旅行にしては少ない荷物で、サラリーマンには見えないし、時間を持て余した主婦にも見えず。そんな風景を見ていて。

ふと線路脇からアンダーグラウンドの戦士が飛び出してくるような気がした。

ホーム下の空間は、かつて私たちが暮らしたかもしれない場所。「ネイティヴ・ジャパニーズ」という言葉が生まれるほどに各国によって地上を占拠され、蟻の巣のような莫大な地下帝国で生まれたかもしれない人々。生まれなかったかもしれない人。生まれたが過酷な暮らしで命を落としたかもしれない人。人。

太陽の当たらない巨大な地下帝国で、山手線は存在しえず、トロッコのような簡易な移動手段で私たちは移動する。そこではお酒を飲んで朝帰りすることもなく、サラリーマンの仕事や職種すらも成立しえない。そこに生きる価値感は、常に過酷な戦闘に命は危険にさらされ、次いつ会えるともわからない人間関係で支えあい物事は、人生は、至極シンプルに進む。生きるか、死ぬか。

存在しえたかもしれない無数のアナザーワールドではなく、いま私たちが生きているのは何億、何兆、何京・・・分の1の確率で生まれた世界で、その1人である脆い存在を改めて感じさせられる、

「お前はいまを本気でいきているか?」

この本を読んでいる間、常にそう問いかけられているようで、胸がドキドキして読むことをやめられず一気に読んだのだった。

8分後、まだ薄暗い新宿駅に煌々と光る山手線車両がすべりこんできて、そんな思いを胸に、どこへ向かったかはまた後日。

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