chiharuf
境目を超えていく無重力な存在
「あん」(監督:河瀬直美)
2017年最初の映画は、今更ながら映画仲間に薦められた「あん」を観ました。
勝手に人の思いや伝統文化が継承されるストーリーを想定していたものの、社会問題にも触れながらストーリーは意外性を持って展開。
いつも思うのだけど、河瀬監督の映画は"非言語"なるものの表現に引き込まれる。
言語で説明できない何か、主人公がその時感じるもの・感じているが言語では説明しえないもの・・
それがとても素敵。
特に中盤以降、樹木希林さんが自然と対話する描写は、もっと見ていたかった。
社会の中に存在する境目の、外と中。その壁を軽く超えていく存在。そしてしまいには、本当にその壁を超えて行ってしまう。その描写は、メキシコ人のイニャリトゥ監督を彷彿とさせるような、
生々しく重力を感じられる、素晴らしいシーンだった。
その描写に、なぜこれほど惹きつけられるのかと考えてみると、小さい頃に感じた感覚に近いからなのかな。小さい頃は、子ども独自のルールで子どもなりに世界を把握しているのに、大抵の世界のルールは大人によってつくられるものなので、そこで子どもが感じられる疎外感。なのに、なにかとても懐かしい感覚。
いずれにしても、当初の想定とは大きく異なる(良い意味で)映画体験なのでした。