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chiharuf

現代ものがたり論

最近、登園自粛の息子と一緒に初期ディズニーを中心に見直している。

私は小さい頃、特にプリンセスに憧れる子どもではなかったので(どちらかというと車が好きだったよう笑)、ディズニーでよく観て記憶に残ったものといえば「不思議の国のアリス」あたりだった。

ただ大人になってから見ると、コンテンツとして本当によくできていると思わせられる。特に初期プリンセス作品群の多くが原作はグリム童話だったりするものの、その時代に合わせた教訓に溢れていたり、その時々の社会や生き方が反映されていたり。


あくまでも子ども向けがメインの作品なので、大人になってから驚くのは、キャラクター同士(男女)の情事が実は作品のほんの一瞬だけであることで、あとはかわいい周辺キャラクターたちのミュージカル調のシーンなどが作品の尺の大多数を占めている。そして子どもたちは(年齢にもよるけど)完全にそちらに釘付けになっている。


・シンデレラの靴はなぜ消えなかったのか(魔女の陰謀論)

すごい見出しにしてしまった笑、家族で見ていて夫と物議を醸したのがこのあたり。事前に魔女から何度も警告されたにも関わらず、なぜシンデレラの靴は消えなかったのか?(しかも両方)もしかして魔女はシンデレラの亡くなった叔母など近親者で、全ては魔女によって仕組まれたストーリーなのではないか?(すみません、特に答えはないです)そしてこの物語の根幹は「信じて努力すれば報われる」だと思うけれど、2022年の社会から見てしまうと、圧倒的にシンデレラと異母姉妹の描かれ方が天と地ほど違う方が気になる。(キャラデとしては別世界レベル)。この教訓の前提は、「(女は美人であれば)報われる」で、ブサイク姉妹(失礼)だって性格は悪いけれど歌やお稽古、そして類まれなるチャレンジ精神でとても努力しているように見受けられる。なぜこんなにも性格が悪くなってしまったのか、物語の尺上カットされているが彼女たちの壮絶なる時代の背景や物語もあったのではないか?その裏側のストーリーの方が現代には合っているかもしれない。だからか、内容は少し違うけれどその後彼女たちのスピンオフも何作品か出ている。


・海の底まで契約社会(リトル・マーメイド)

「リトル・マーメイド」でただただ驚いたのは、海底まで完全に契約社会であることで、この年になってから見ると、「え、魔女は全然悪くないじゃんね。完全にアリエルがサインしちゃってるじゃん」と思ってしまうところがよくない笑 ここも「この契約を反故にできる可能性はあるか」「前提条件による」などと我が家では夫と不毛な物議を醸している。そして改めて観る、魔女アースラの格好よさ!と、巧みなセールストーク。彼女のビジネスモデル自体はよくないのかもしれないけれど、彼女がアリエルを説得し、契約書にサインまでさせてしまう際のパフォーマンスやセールストークというか営業スタイルは格好良いところがあり、見習いたいものがある(大丈夫かな?笑)


・女から本を取り上げるムラ社会(美女と野獣)

元々はフランスの物語(主人公ベルがBellではなくBelleだと初めて知る)、1991年ディズニー製作作品。この辺りになってくると、物語上でもややジェンダーへの配慮が垣間見え始める。比喩ではなく、文字通り村の変わり者であるベルから本を取り上げるムラ社会が描かれていたり、強引に結婚しようとする者が最後うまくいかないように描かれていたり。ただこちらでも面白いなと思ったのが、父の代わりに人質として野獣の城へ向かうベル、という前提を完全に忘れていたので「え、この流れで恋に発展するの?ダメでしょ!完全にストックホルム症候群じゃん」と思いきや、ちゃんとそれぞれが相手に惹かれるポイントや布石が描かれているのも物語の巧みさを感じました。ただやっぱりこの辺りまでは社会に翻弄される女性像が描かれている。それを克服した「今の時代の強いプリンセス」が、やはり「アナ雪」なのだと思う。


・古代や海底から宇宙、ロボットまで制覇するディズニー

そしてなんとも驚いたのが近年の作品群は、もはや設定や視点が超・多様で、古代を生きる人たちが主人公だったり、リロやミゲルなど従来の白人ではない主人公が登場する内容から宇宙、ロボットへ派生していることだった。特に最近見て良かったのが「ウォーリー」で、これはもう舞台が完全に宇宙、主人公もロボットなのでジェンダーすらなく、一切言語的コミュニケーションなしというすば抜けた設定なのだけれど、心の機微を描く素晴らしい作品だった。この辺りのブランディングというかマーケティングを、ディズニーは世界の市場全てを見渡して、ダイバーシティを前提にした超厳しい作品企画プレゼンを多く行っているのだろうなと推察する。そりゃ数億〜数十億円規模で投資して製作するのだから当然といえば当然なのだけれど、やはりこの視野の広さというか、古典ヨーロッパ物語から宇宙&ロボットまで展開できる度量というか、はアメリカでないと難しいなと感じた。


そんな中、最近のお気に入りはやはり古典というか「くまのプーさん」のユニークでおかしな世界。(お気に入りはハニーハントの舞台にもなったプーさんの夢の話)


今日も息子と楽しみたいと思います。



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